大判例

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東京高等裁判所 昭和28年(う)201号 判決

被告人 幡谷俊平

〔抄 録〕

第三点及び第七点(法律に従つて判決裁判所を構成しなかつた違法)について。

原審第一回公判調書の記載によれば、裁判官君和田保蔵、検察官武村啓太郎と表示され、同第二回公判調書の記載によれば、裁判官検察官は第一回公判調書記載のとおりと表示され、同第三回公判調書の記載によれば、裁判官君和田保蔵、検察官野上大也と表示されていて、裁判官君和田保蔵が判事であるか判事補であるか、右各検察官が検事であるか副検事であるかを明記していないこと及び刑事訴訟法第四十五条、判事補の職権の特例に関する法律によつて定められた資格を持たない判事補は一人で判決をすることができないことはいずれも所論のとおりである。しかし、判決裁判所を構成すべき裁判官は、裁判所法、判事補の職権の特例に関する法律にもとずいて任命され、その職務を執行するのであるから、無資格者が判決裁判所を構成することは殆んど絶無であるといつても過言ではないと考えられるのであり、検察官も亦検察庁法にもとずいて任命されその職務を執行するのであるから、無資格者が公判廷に出席することは稀有の事例であるというべきである。従つて、特に反証なき限り、判決裁判所を構成した裁判官及び公判廷に出席した検察官は有資格であると推定して妨げがなく、特別の事情がない限り、一々その資格について控訴審において職権調査をする必要はないものといわなければならない。弁護人提出の保証書は、反証とするに足りないものであり、又特別の事情の存在を推知させるに足るものでもないから、前記裁判官君和田保蔵は適法に判決裁判所を構成する資格を有するものと認むべく、前記各検察官も亦公判廷に列席する資格を持つものと認むべきである(検察官武村啓太郎は水戸地方検察庁土浦支部の検事であることが記録編綴の同人作成の出沼利男に対する供述調書謄本によつて認められる)。又、刑事訴訟法第四十八条刑事訴訟規則第四十四条第一項第四号、第五号によつて、公判調書に裁判官の官氏名及び検察官の官氏名を記載するには、裁判官及び検察官とだけ表示するをもつて足り、判事、判事補の別又は検事、副検事、検察官事務取扱検察事務官の別を表示しなかつたとしても、公判調書の記載として欠くるところはないものというべきである。蓋し、裁判官、検察官は判事、判事補等又は検事、副検事、検察事務取扱検察事務官等を包括する名称ではあるが、なお右規則第四十四条にいう「官」と解し得るからである。

以上説明の理由によつて、原審における訴訟手続には、法律に従つて判決裁判所を構成しなかつた違法及び刑事訴訟規則第四十四条に違反した点なく、論旨は理由がない。

第二点(訴訟手続の法令違反)について。

原審各公判調書には、公判をした裁判所の表示として水戸地方裁判所土浦支部と記載されているだけで、開廷の場所が記載してないことは所論のとおりである。しかし、刑事訴訟法第二百八十二条第一項によれば、公判期日における取調は公判廷で行うと定められ、裁判所法第六十九条によれば、特に最高裁判所が指定する場合のほかは、公判期日における取調は当該裁判所の法廷で行われることが明らかであるから、特段の事情のない限り、右水戸地方裁判所土浦支部の記載があることによつて、同裁判所の公判期日における審理及び判決は同支部の法廷で為されたものと認めるのが相当である。刑事訴訟規則第四十四条は、その第一項第三号において、「裁判所法第六十九条第二項の規定により他の場所で法廷を開いたときは、その場所」のみを公判調書に記載すべき旨を命じ、公判裁判所が当該裁判所の法廷で開廷したときは、開廷の場所の記載を要しない旨を定めているのである。従つて原審各公判調書に開廷の場所の記載がないことについては、原審の訴訟手続に何らの違法はなく、論旨は理由がない。

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